植物身辺帳

植物身辺帳

種植えて新芽出て伸び葉が茂り蕾が出来てついに花咲く

焼肉屋に捧げるうた

歩く。違和感を感じながら。
あいつがいる。
歩く。

あいつが顔を出して笑っている。早く歩けとせがんでいる。

背中を押されないとなにもできない俺は臆病者だ。そしていま俺はあいつに押されて歩く。

汗がでる。この歓迎されざる客を迎えてくれるところを探して歩く。

場所が、場所がない。

押し問答を繰り返しながら歩く俺たち。俺たち?

見つけた。場所を見つけた。
営業中の看板。一瞬躊躇う、すぐに背中を押される。

愛想のいい親爺に挨拶する歓迎されざる客。奥からおかみさん。もう挨拶する余裕がない。

早く、早く、場所へ、早く。

しゃがむ俺たち。

さあ、来たまえ、約束の地だ。

地が歓喜に沸いた。
天が祝福した。

俺はおかみさんにちゃんと挨拶すればよかったと思った。

俺はどっちでもいいけどな、とそいつは言った。

さあ、お別れだ。

俺はレバーをひねる。

流れていくあいつ。
それがあいつを見た最後だった。

別れ際、また明日な、と声が聞こえたような気がした。

外へ出て俺は歩く。当てもなく歩く。

春風が海を渡る。
草木の萌えるなかを俺は独り、歩く。

おわり。